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- 榊原康政・調査
- 館林城調査
2017年お正月。デービッド・アトキンソンまとめ読み!
【デービッド・アトキンソン著「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」他2冊】
「館林城の再建をめざす会」活動の理論的根拠を示してくれた。スッキリ!
「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」は2年前の2014年10月に刊行された。
発売当時書店で手に取っていた。
表紙の宣伝コピー「ゴールドマン・サックスのアナリストが日本の伝統企業の社長になった・・・」、勘違いして、お金持ちの外人金融マンが俗っぽく日本の伝統文化にあこがれて、資金力で国宝修復事業の会社を買い取ったと思った。
いやなヤツという偏見をもってしまい、もとの書棚に返してしまった。(粗忽者だね)良く覚えている。
昨年末12月30日、仕事納めも済んでいつもの市ヶ谷のエクセルシオールでお茶。この店は文教堂書店と店内で繋がっていて書店とカフェが行き来できる。
便利なお店だ。
文教堂の平積みコーナーに「新・所得倍増論」が大量に置かれていた、所得倍増論には興味が無かったが、隣に「新・観光立国論」が積んであった。その帯のキャッチコピーに目が留まった。山本七平賞受賞と書いてあったのだ。
思わず手に取り立ち読みした。
私は山本七平氏の大ファンである。
自宅も故・山本七平氏邸から徒歩100メートル以内に住んでいる。(これは偶然だった。)
ちなみに、通っているスポーツジムは七平氏が経営していた山本書店のすぐそばだ。
山本七平賞受賞なら買わなくていけない。しかも観光のことが書かれている。
(現在、那須烏山市で観光をテーマにセミナーの講師をしている)
本を買い求め、カフェで読み始める。時間はたっぷり。
これが、大正解。とても良くできた素晴らしい書籍だった。すぐに著者のプロフィールに書いてあった著作を書店で大人買いした。
『新・所得倍増論』 2016年12月12日発行 東洋経済新報社1500円+税
『新・観光立国論』 2015年6月18日発行 東洋経済新報社1500円+税
『イギリス人アナリスト日本の国宝を守る』 2014年10月20日発行 講談社α新書 840円+税
◎著者プロフィール デービッド・アトキンソン David Atkinson
1965年(昭和40年)イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。
アンダーセン・コンサルティング、ソロモン・ブラザーズ、
ゴールドマン・サックスでアナリストとして活動。
バブル崩壊後の日本の銀行に隠された不良債権の実態をレポート。
注目される。
2007年ゴールドマン・サックス退社。隠遁生活。
1999年に裏千家に入門。2006年茶名「宗真」を拝受。
2009年、国宝・重要文化財の補修を手懸ける300年を越える老舗、小西美術工芸社へ。
2011年、会長兼社長に就任。仕事場は東京、京都に町屋を改修した自宅がある。
日本の伝統文化を守りつつ、伝統文化財をめぐる行政や業界の改革の提言を続けている。
アナリスト時代に身につけたデータに基づく分析の確かさで、
日本人が気づかない様々な改善点を見つけてくれる。
●
新書版の「日本の国宝を守る」が第1作目だった。
かつて、手にとったのだが、早とちりですみません。2年前に読みたかったね。
3冊の書籍を読んだが、最初の著作「日本の国宝を守る」
に著者の分析と提言がほとんど詰まっていた。
後の2冊は内容をわかりやすく、資料を増やして膨らませたものだ。出版社の企画本かな。(柳の下にドジョウは何匹もいるのだ。)
新書だけを読んでも充分であるが、資料データの数が増えた分、後の2冊も充分価値がある。
講談社α新書から2015年『イギリス人アナリストだからわかった日本の強み弱み』も出版されている。
他に『国宝消滅--イギリス人アナリストが警告する[文化]と[経済]の危機』(2016年2月刊)という著作もある。
●
目からウロコのデータが沢山あり、考えさせられる。なぜ館林城の再建をめざす会の活動が
良い社会を築く方角を向いているのか・・・理論的に説明してくれる。嬉しい著作だ。
以下著作の小見出しから引用。ぜひ読んでください。
・高度成長のまぼろし。
・日本人の生産性 世界25位。
・つごうのいい話をくっつける議論
・『シンプルアンサー』が大好き
・世界第8位の経済になる危険性
・文化財の漆に中国産漆が7割。危機!
・『楽して儲けたい』人々
・日本の経営者には『サイエンス』が足りない
・コンセンサスは時間の浪費
・コンセンサスより数字を
・日本に必要なのは分析
・『文化財保護』で日本はまだまだ成長できる
・文化財修理は若者を救う
・地方振興の起爆剤に
・『観光立国』日本が真の経済復活を果たす
・観光面ではアジアの劣等生
・細かい補修とガイドが急務
3冊の著書で使用された図版のほんの一部。
日本の歴史遺産を活用して日本を観光立国させる緻密な考証が提案されている。
著者は歴史文化施設の生きた活用と、箱物だけでなく、我々が暮らす街並みも歴史を大切にし、
活かした景観を修理しながら保全する重要性を指摘する。
まさに、館林城の再建をめざす会はお城の再建だけでなく、城下町の歴史的景観を大切にする活動と一致する。
個人で、民間で、この大事業を進めるのはあまりにも非力である。
イギリスのような国を挙げての文化財の支援がのぞまれる。
●
イギリスも昔からこうした歴史文化財を大切にしてきたわけではないと著者が記している。
「国宝を守る」の153頁に記されている「イギリスの文化財不遇時代」を読んでわかった。
イギリスでも中世の貴族の館が壊されてきた歴史があった。
1878年〜1975年までに1116件の貴族の館が潰されたという。
こうした状況をかえるべく、1975年に「SAVE]という組織が成立した。
きっかけは、ロンドンにあるビクトリア&アルバート博物館で、潰された1000件の館の写真を中心に、
この100年間で潰され消えていった様々な文化財を取り上げた展覧会を開催。
この展覧会はイギリス国内で非常に大きな反響を呼んだ。
1975年「SAVE」の対象は貴族の館だけだったが、1977年からは教会建造物の保護も訴え始めた。
1979年からは工場、鉄道の駅、発電所まで含まれるようになった。(産業革命遺産の保護ですね)
さらに1983年からはイギリスの文化である「パブ」も保護すべきだとキャンペーンを始めた。
「SAVE」はイギリス文化財の保護の重要性を30年以上啓蒙し続けた。
その結果が、日本とイギリスの違いだ。データに表れている。
文化財建築修繕費用 日本約82億円。イギリス500億円。
(日本のGDP479兆円。イギリス259兆円)
日本は文化度が低い。先進国とは言えないね。恥ずかしい!
この差が観光収入の差になっている。
イギリスはしっかり元を取っているのだ。
詳しくは、デービッド・アトキンソン氏の著作をお求めください。
日本の活力と明るい未来が開けます。
(2017年1月7日アップ:田中茂雄)